Imago.Gaming-log

休止中

Sunless Sea

Early Access

f:id:imago:20140706060513j:plain

 

 Sunless Seaが意欲的なゲームであることは確かだ。

 スチームパンククトゥルフを足して2で割ったような世界観がまず良い。スタート地点はFallen Londonと呼ばれる架空の都市にある港だ。プレイヤーはそこを起点に壮大に広がる常闇の海洋を冒険する。船は燃料を動力とし、乗組員には食料が必要となる。Zeeと呼ばれるこの海洋は暗闇に支配されており、光の届かない場所では恐怖におびえることになる。

 

f:id:imago:20140706060713j:plain

 畏怖の美(妖魔夜行を思い出させる表現だ)を感じさせる独特のアートワーク。

 

 要するに、燃料と食料とSAN値(本作では「Fear(恐怖度)」となっている)というパラメーターを操作し航海していくわけだ。ディベロッパーであるFaibetter Gamesが影響を受けたというDon't Staveに例えると、常に夜の状態で松明を絶やすことなく、空腹とSAN値にも気を配りながら進めていくゲームとなっている。

 広大なフィールドを自由に探索できるタイプのゲームでは足枷のようなものがないとプレイ時の緊張感や面白味に欠けてしまいがちだ。しかし、Sunless Seaの足枷(それ)はFallen Londonという大きな杭に短い鎖で繋がれている。物を買うのも、船員を募集したり、船体を修理したり、恐怖を和らげたり、とにかくすべてがこの港で行われる。他にも港は沢山あるがLondonとは比べものにならないくらいお粗末だ。この圧倒的なLondonの拠点感は、本作がFaibetter Gamesのブラウザゲーム「Fallen London」の派生ゲームであるからだろう。ともかく、何をするにも割高であり、自分がプレイした限りでは常に財政難が付き纏う。

 まず、なんと言っても船の燃費が非常に悪い。エンジンの強化が罠アップグレードとしか思えない点も含めれば、クソと言ってもいいくらいだ。遠くの港へ行けば行くほど出費がかさむのは当然として、問題はLondon以外の港で燃料を買うと基本的に倍額を取られることだ。そんな燃料を買っていては余裕で赤字となる。そのため燃料はあらかじめ用意することになり、寄り道といった余裕を挟むことが難しくなる。これはさらに恐怖値管理も絡み、かなりタイトな航路が求められる。

 ではSunless Seaは交易中心のゲームかというと、その割に各港にLondon並みの市場がない。そのためあっちでソレを買ってこっちで売って利益を上げる、といったよくある交易システムすらない。ない、というかほんのちょっとはあるが、結局往復のコスト(燃料、食料)を考えると微々たる収入しか手にできなかったりする。棺桶を運ぶ仕事は近場での安定した収入源のひとつだが、それだけを繰り返してもワープアからは脱出できない。リスクを冒して遠出し多くの港を巡った方が、結果的には収入も多くはなるが、それでも渋い印象はある。

 このカツカツっぷりは確実に冒険の足を引っ張っていて、どうにもFaibetter Gamesがこのゲームでどう遊ばせたいのかが見えにくい。

 

 じゃあ、戦闘はどうか?

 これもまた影響を受けたというFTLがリアルタイムな戦闘にクールダウン制を取り入れたのに対して、こちらはウォームアップ制となっている。表現は正反対ながらやってることは同じで、これ自体はとくに問題はないが、戦闘における行動のバリエーションや敵の種類が圧倒的に少ないので、すぐに単調な作業となってしまうところは致命的だ。気が付けばFlaresとSalvoのパネルしか使わなくなっていた。

 

f:id:imago:20140706060830j:plain

 戦闘画面。UIはすっきりとしていて上手くまとめてある。クエスト部分の作りだけはやけに酷い。

 

 ここでほんの少しだけ攻略指南的なことを。

 先ほど棺桶運びだけではワープア云々と語っていた部分について。とはいえSunless Seaにおいて棺桶運びは基本だろう。LondonからVenderbightのルート上には「飛んでやってくるSupplies(食料)」ことBat-Swramさんがいる。彼らと積極的にエンカウントして遠征のための食料を溜めよう。とはいえBat-Swramとの戦闘を繰り返すのは苦痛でしかない。とりあえずステータスのMirrorsを上げて索敵能力を強化すれば戦闘時間の短縮につながる。キャラ作成では「A natural philosopher」を選んでおきたい。

 食料は重要な物資だ。航行中に燃料が残りひとつとなった際に2つで燃料ひとつ分に変換できる。あるいは食料1で燃料1にもできるが、失敗すると食料を失うといったチャレンジもできる。要するに食料は多いに越したことはないということだ(船の積載量には限度があるが)。

 恐怖値の管理で重要なことは、女性が夜道を歩く際にかけるアドバイスと同じだ。すなわち「明るいところを進め」である。海岸線はどんな小さな陸地であっても灯りポイントなのでスイングバイ的な軌道で進んで行くのもあり。またFearが100になってもただちにゲームオーバーとはならない(戦闘中に満タンになると即ゲームオーバーになる)。どうやらこの恐怖値というのは船員(名もなき乗組員たち)に関する数値で、限界を超えると暴動が起こり、それを抑えきれないとゲームオーバーとなる。鎮圧の方法は2種類あり、ステータスのIron依存の方法(つまりステの数値によって成功確立が変動する)とHeart依存の方法である。Ironsでは恐怖値が劇的に下がるが、航行に支障が出るレベルで船員がごっそりと減り、Haertsでは船員の損害は抑えられるものの、恐怖値の減少は少ない、とどちらも長短がある。

 

f:id:imago:20140707114252j:plain

 飛んでやってくるSuppliesことBat-Swramさんは捨ててもFear値-1とおいしい。

 

 ゲームシステムにおいては、とにかく「ポテンシャルはあるが残念な調整」となっている。もうひとつの魅力であるTRPG的な部分は、まあ、英語という壁が…(評価不能)。というわけで、どうしても悪いところばかり目に付いてしまうが、つまらないゲームというわけではない。ただ英語が分からないと面白さが半減するゲームではある。英語が分からないにもかかわらず延々とプレイしている自分はどこかおかしい(ゲーム内で長文があったら日本語であっても基本読み飛ばす類の人間という時点でお察しである)。

 早期アクセス作品なので、どうにかなんねーかな程度に期待したい。

 でも、やはり本作に一番必要なのはローカライズだろう。