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Hotline Miami

 大昔に書いた記事のサルベージ3/3。少しだけ手を加えてある。

 今となっては公式で日本語がサポートされたが、空回っている感が強い。

 

説明不要の有名インディータイトル

 前のレビューの際に少しだけ触れていたが、このゲームはThe Darkness IIより先にクリアしている。

 2012年を代表するインディータイトルのひとつである本作は、すでにいろいろな所で語られており、今さら自分が何か付け足すようなことはない。レビューと称して妄想を垂れ流すには打ってつけの状態だ。

 

 豚マスクさんは続編にて扱えるそうだ。

 

サイケデリックで謎に満ちた暴力世界

 とはいえ少しくらいは説明しておこう。

 Hotline Miamiはサイケデリックに彩られた80年代も終盤のマイアミを舞台に、動物マスクを被った主人公がこれでもかと暴れまくるトップダウン・シューターだ。決してリアルではないグラフィックだが、残酷表現においては本能的な部分をグリグリと刺激するものとなっている。

 また、このゲームはチャプター分けがされており、その流れはだいたい以下のような手順を踏む。すなわち依頼を受け現場へ行きミッションをこなし、その後コンビニやピザ屋に立ち寄り会話をすることで物語の背景が徐々に明かされていく。

 最初の任務完了後、主人公が膝を突き緑色のゲロを吐くシーンは、このゲームに漂う不吉さを端的に現している。話が進んでいくと、前述した進行形式も次第に崩れていき事態は混迷を極めていく。

 

殺るか殺られるか、それがHotline Miamiだ

 本作のメインとなるミッションパートに突入すると、きな臭いがどこかのほほんとした日常パートから一転し、殺伐とした緊張感が漂い出す。

 そして主人公はスプラッター映画の殺人鬼よろしくターゲットを次々に血祭りに上げていく。依頼目標は毎度異なるが、殺ることは毎度同じだ。しかし主人公は不死身のジェイソンなどではなく、ターゲットもただ無惨に殺されるだけのティーンエイジャー達ではない。実際のところはロシアンマフィアにカチコミに行く鉄砲玉なのだ。

 そのため実に弱い。先制攻撃だろうが反撃だろうがとにかく一発もらったら即ゲームオーバーなのだ。なんでこんなに弱いのに毎回自信満々に素手で正面から乗り込むのか。いや、装備もあるにはあるが、各種動物マスク(マスクはそれぞれ特殊効果がありアンロックによって増えていく)というのもイカレてやがる!

 当然のごとく初見においては死にまくることになるだろう。そうしてひとつのミッションを終える頃には、物憂げな死体が転がる凄惨な現場が出来上がっている。BGMも低いうなりのような環境音じみたものへと変化し、孤独感はいやが上にも増していく。

 実に素晴らしい演出だ。

 

パズルとアクションの境界を行き来する楽しさ

 ミッションパートは、ただ演出が素晴らしいというだけではない。死にまくることを前提としたゲームデザインとなっているが、理不尽なだけの死にゲーとならないようしっかりと作り込まれている。

 最初は素手の主人公も敵を倒すことで武器を得る。どんどんと敵を倒すことで武器の選択肢も増える。武器の選択は攻略の指標だ。

 すなわち鈍器や刃物なら大きな物音を立てないので周りに気付かれにくいが、仕留めるには充分な距離まで近づく必要がある。ナイフなどは投げて仕留めることもできるが、連射のきく銃器の方が使い勝手はいいだろう。しかし銃は発砲すると、その大きな音で周りに気付かれてしまい、包囲される危険がある。またこれを利用して敵をおびき出すといったこともできる。

 敵は素早く銃の狙いも正確なため油断はできない。生存の鉄則は各個撃破だ。人の少ないところを狙い、時に素早く仕留め、時にじっと好機をうかがう。パズルゲームのような戦略は非常に有効だ。

 とはいえ慎重にプレイしていても、いつもうまくいくとは限らない。ちょっとしたタイミングのズレでピンチに陥ることもある。逆にタイミングが合えば、ちょっとしたミラクルプレイも飛び出す(このちょっとしたミラクルプレイはリプレイ性の高いゲームで起きやすく、かつ優れたゲームであることの証左でもある)。このふとした瞬間にパズルがアクションへと切り替わる感覚が実に楽しいのだ。

 

不満もチラホラ

 しかし不満もある。

 まずなんといってもミッション数の物足りなさ。チャプターは20ちょいあるが、純粋なミッションの数はそれほどない。

 またいくつかあるボス戦は最初の立ち回りを失敗すると(初見においてそれはギャンブルだ)、極端に難易度が上がる。その上リスタートするとまた会話から始まるなど、ストレスの少ない工夫がこの部分だけ生かされていないなど、はっきり言ってもう2度としたくないと思わされた。

 今のところ日本語化がないのも取っ付きにくい要素だが、ゲームの進行において致命的な妨げとなることはない。またどういった会話がなされているか翻訳したサイトもあるので、しっかりとストーリーを追うこともできる。

 

 翻訳に関してはこれが掴みやすい。ただし、いろいろとネタバレ注意。

 

総評と続編への期待と妄想

 最初見かけた際は「またレトロゲー風味の鬼畜ゲー(いろいろな意味で)か…」と敬遠していたが、ハンブルさんに勧められてやってみたら、自分のやらず嫌いだと痛感させられた。

 Hotline Miamiは優れたストーリーテリングや優れたサウンドトラックも評価されているが、個人的に一番気に入ったのは、やはりその中毒的なゲーム性だ。それが全てだと言える。まだまだ全然殺し足りない!  もし自分が続編を作るなら、場所を千葉に移し、レベルデザインは自動生成を採用し、100階建てのビルを制覇するゲームにしたい。タイトルはHotline Maihama。あとステージエディタとSteam Workshopを組み合わせれば、いくらでも遊べそうだ。なんならオープンワールドにしてもいい。

 …などと書いてる時点で続編の情報がどんどん解禁されている。あまり自分好みの要素がないのが残念だ…。

 ともあれゲーム文化は時代を重ね、ビデオゲームによって育まれた新世代のクリエーターを排出するまでになった。近年、そういったクリエーターが自身のゲーム原体験を現代に再構成し、新たなスタンダードを創出する動きが活発になっているように思う。Hotline Miamiもそうした精神が息づくインディーゲームを代表する良作と言えるだろう。