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Project Zomboid

Early Access

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 Project Zomboidはタイトルからも判るとおりゾンビを題材としたゲームだ。

 ブードゥー教をルーツとしたゾンビはロメロの映画により感染力を持った生ける屍として世界中に広く認知された。それまではホラー・フィクションの脇役にすぎなかったゾンビが、今や多くの作品をかかえる主役となっている。ゲーム・フィクションにおけるゾンビの位置付けもRPGのザコキャラ程度でしかなかったが、バイオハザードのヒットは今も続くゾンビブームの嚆矢となった。また、リアルな“人を打ち殺すゲーム”が社会問題として槍玉に挙げられるにつれ、暴力表現の逃げ道(パンツじゃないから恥ずかしくない的な)として活用されてきた感もある。現在においては、終末的世界観との結びつきの強さから、核戦争と共にお手軽にポストアポカリプスを味わえる題材としてユーザーとディベロッパーの間で知識の共有がされてきた。いわゆる“お約束”というやつだ。

 本作もそんな“ゾンビゲー”のひとつであり、他のゾンビゲーよろしくサバイバルゲーであり、マルチゲー(将来的には)であり、早期アクセスゲーでもある。Build 23バージョンの現在はシングルプレイしかなく、マルチプレイに限らずまだ実装されていない機能も多い。日本語化についてはThe Indie Stoneのフォーラムにて有志による翻訳プロジェクトが進んでおり、将来的には対応されるようだ。

 一足先にそれらを体験したいのなら、SteamのベータプログラムにてIWBMSに参加するという方法もある、が試してはない。

 

 クォータービューの2Dグラフィックが印象的なProject Zomboidは数あるゾンビゲーの中でも異色だ。グラフィックもそうだが、ゲーム内容においてもサバイバルがメインに据えられてはいるもののその結末は死しかなく、プレイヤーは避けられぬ運命を前に悪足掻きをすることとなる。これは単にエンディングが未実装というわけではない。開発思想としてそう作られているのだ。

 また死亡後も世界は続いており、ゲームオーバーしたセーブデータからでも別キャラでリスタート可能となっている。そして死亡した以前のキャラは、その現場で死体としてプレイヤーに発見されるのを待ち続ける。

 そんな延々と続くProject Zomboid世界の舞台となっているのがKnox Countyだ。Knox Countyは非常に広大な土地を有しているが、見渡す限りゾンビと死体しかない。時折ヘリが上空を飛び回る音もするが、救助イベントなどはなく(将来何かしらのイベントが入るのかもしれないが)、ここがが見捨てられた土地であることが分かる。どこかでする銃声もNPCが導入されていない現バージョンにおいては遠い遠い存在だ。探索意欲をかき立てる世界ではあるが、どこまでも虚しさが付き纏う、そんな独特の情緒が味わえるのは今だけかもしれない。

 

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 レストランもこのとおり貸し切り状態! わ、わーい…。

 

 本作は市街地を舞台にしたサバイバルゲームとして、その特性をうまく生かしている。そのひとつがライフライン概念の導入だ。

 スタート時、Knox Countyには水も電気も通っている。しかしそんなライフラインも時間の経過により無慈悲にも絶たれてしまう。サバイバルゲームは物資の少ない序盤こそ苦しいものの、そのひと山を越えるとあっさりと安定してしまうものだ。Don't Staveは季節を設け冬の期間は作物が育たなくすることで、もうひと山作り上げた。これは一時的なものであるが、Project Zomboidのそれは恒久的なものとして、時間の経過により生存が厳しくなっていく状況を作り上げた。

 また、Knox Countyには住宅だけでなく商業施設や公共施設など数多くの建物があり、どこにどういった物資があるか、どこを生活の拠点とするかといった目標が立てやすくなっている。しかしながらゲーム内にマップ機能はない。最初のうちは広大な土地を手探りで探索する楽しさもあったが、軽い気持ちで森の中を進んで行った結果、抜け出せなくなり餓死してしまってからはマップサイトを使用するようになった(そして無暗に森に入ることが自殺行為であることが判明した)。せめてBook関係でKnox Countyの地図か、あるいはMuldraughやWest Pointの地図を追加すべきだろう。

 

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 なお、餓死とばかり思っていたが、怪我による死亡であった模様。

 

 ところでWest Pointといえば魅力的な物件が多く、ここもあそこも拠点にしたいと思わされる。こういった楽しみも都市サバイバルの醍醐味だ。

 

 先ほどゾンビものはお手軽にポストアポカリプスが味わえるといったが、Project Zomboidはライフライン概念を導入したり、あくまでも感染者としてのゾンビにこだわったり(つまりゲーム的なバリエーション豊かなゾンビを廃しているということだ)と、リアルなゾンビ感染による終末世界のシミュレーションに重きを置いている。

 しかしそういったリアルへのこだわりが裏目に出てしまっている部分もある。物を持つ、バッグに詰め込む時の待ち時間は、個人的に我慢のできないものだった。そうした方がより現実的だという理屈は分かるが、実装した結果、プレイヤーキャラの頭の上でプログレスバーが100%になるのを待つだけというものでは、ゲームとしての楽しさを損ねているだけでしかない。しかもこれが結構長い。重量の重い物ほど時間がかかるという仕様なのだが、これが深刻なレベルで負担となっている部分が建築関連だ。

 バリケードや木箱などおよそビルド可能なオブジェクトには木板(Plank)が不可欠だ。そして木板の元となる木材(Log)はこのゲームにおいて最も重いアイテムとなっている。2本も持てば、手ぶらでもない限りだいたい過荷重となって移動力が落ちる。重量軽減の効果があるバッグに詰めれば過荷重を回避できるが、これを板に加工する際にはバッグからメインインベントリに移し替える必要があり、詰め込む時と同じだけの時間がかかるので実用的ではない。

 建築の工程や材料は簡素で料理ほのどのややこしさはない。単純作業と言っていい。しかしながら1枚のバリケードを張るのですらやたらと時間がかかる。そして、その間ひたすらプログレスバーとの睨めっこが続くのだ。ある程度の面倒くささも建築の魅力の前では楽しさが勝るものだが、Project Zomboidの建築においては苦痛の方が強い。そんな建築を繰り返してスキル値を上げないとRain Barrelが作成できないのも辛い。Rain Barrelはライフラインが止まった際に水を確保する貴重な方法のひとつだからだ。あと、睡眠時の待ち時間もどうにかしてほしい。

 

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 読書中のプログレスバーと被っているオブジェクトがRain Barrelだ。

 

 早期アクセス時のDon't Staveも同じような問題を抱えていた。ごく初期のころのゲームバランスはデフォルトでの夜の時間が今より長く、冬の期間も長かった(確か)。特に夜間と冬場は下手に動くとあっさり死ぬため、必然的にただ待機するだけという場面が多くあった。この時感じたのは「ゲーマーが特定のタイトルに注ぎ込む時間というのは貴重なものだよなあ」ということ。そして、そんな貴重な時間を待機にあてることの虚しさだ。

 幸いDon't Staveはアップデートを重ねて行く中で程よいストレスのゲームバランスとなった。Project Zomboidもそうなればいいが、Don't Staveもそれが原因で早期アクセス時のプレイを絶った。というか、Project Zomboidも一旦お蔵入りとしたい。